幸福についてー人生論ー

著者-アルトゥール・ショーペンハウアー
訳-橋本文夫 新潮文庫










[目次]
諸言
第一章 人間の三つの根本規定
第ニ章 人のあり方について
第三章 人の有するものについて
第四章 人の与える印象について
第五章 訓話と金言
第六章 年齢の差異について


[内容]
第一章 三つの根本規定についての概説。人のあり方について、人の有するもの、人の印象の与え方。
第二章 人品、人柄、人物。健康、力、気質、道徳的性格、知性ならびにその完成について。
第三章 あらゆる意味での所有物について。
第四章 他人のいだく印象に映じた人のあり方。他人の思惑、名誉、位階、名声について。
第五章 処世術について。A一般的な見解


ショーペンハウアーについて]
本名アルトゥール・ショーペンハウアー
ドイツの哲学者(1788-1860)
主著は『意思と表象としての世界』
ダンツィヒで裕福な商人の家に生まれる。5歳でハンブルクに移住し育つ。9歳でフランス語習得のためにルアーブルのブレジメール家に2年間預けられる。
11歳の頃、アルトゥールは進学を希望するが、商人にしたい父が反対する。後に商人になると約束のもと、2年間のヨーロッパ周遊の旅に出る。その際、上流階級との交流や美術館や劇場など巡ると同時に、路上の物売り、民衆の貧窮、過酷な強制労働などに衝撃を受ける。
17歳になり、父が不慮の死を遂げると、19歳に母の助言で学問の道に進む。ギムナジウム(中等教育機関)に入る。
21歳でゲッティング大学に入学し哲学を学ぶ。カントとプラトンを学ぶ。
24歳で博士学位論文『根拠の原理の四つの根について』を発表。
26歳でインド哲学を学ぶ。「ウパニシャット」を学び、思想が完成する。
30歳で主著『意思と表象としての世界』を完成させる。しかし、あまり理解されなかった。
その後も論文を書き続ける。
62歳で6年かけて書いた『余録と補遺』が完成。その中に本作品が収録されている。
72歳、肺炎で逝去。

[意志と表象とは]
意志とは、世界の本体、事物の実体のこと。ショーペンハウアーは生の意志と呼んでいる。ただただ生きることを志向し、生の欲望を充足させるためだけに駆動する。世界とは欲望する意志である。
表象とは、現在の瞬間に知覚していない事物や現象について、心に描くイメージのこと。
ショーペンハウアーは世界を表象とみなしていた。この世界は意志と意志が絶えず、ぶつかり合い苦痛しかないと説いた。苦痛を遠ざけるには意志を諦観するしかないと主張した。


[感想]
厭世主義と呼ばれているけど、現実世界は確かにそうかなと思う。大体、諦めることで今ある幸せを実感できるってことかな。苦痛なく生きているだけで幸せだと筆者は言う。悲観的に思われるかもしれないが、「こんなクソな世界にこんな素晴らしいモノ・コトがあったなんて」と小さな事でも喜びになるではないか。