反応しない練習

著者-草薙龍瞬 KADOKAWA

[目次]
はじめに
第一章 反応する前に「まず理解する」
・悩みを無くそうとしない。理解する
・その問題の「理由」に着目する
・心の状態を「きちんと見る」だけで
第ニ章 良し悪しを「判断」しない
・「ムダに判断」していませんか
・"慢"という心のビョーキに気をつける
・「つい判断してしまう」からの卒業
・「自分を否定しない」。どんな時も
・「本物の自信」をつけるには?
第三章 マイナスの感情で「損しない」
・感情を、上げもせず、下げもせず
・困った相手と「どう関わるか」
・大原則ー"快"を大切にしていい
第四章 他人の目から「自由になる」
・他人の評価を追いかけない
・うっとうしい相手から「距離を置く」
・もう較べない。自分のモノゴトに集中!
第五章 「正しく」競争する
最終章 考える「基準」を持つ
・正しい心に「戻る」。何度でも
・いつでも"正しい方向"を忘れない
・自分の人生を「信頼する」

[内容]
はじめに)
どんな悩みも「正しく考える」ことで必ず解消できる。ほとんどの悩みは「心の反応」から生まれる。
悩みの始まりには決まって"心の反応"があるのです。
心が"つい"動いてしまうことーそれが悩みを作り出している"たった一つのこと"なのです。だとすれば、すべての悩みを根本的に解決できる方法があります。それはー"ムダな反応をしない"ことです。


1)反応する前にま「まず理解する」

★"求める心"「7つの欲求」(生存欲、睡眠欲、食欲、性欲、怠惰欲、感楽欲、承認欲)があり、それに突き動かされ反応(喜び、不満)を生み出している。

★心の状態を見ることで、反応から抜け出せる
・言葉で確認する(疲れているな、イライラしてるな)
・感覚を意識する(掃除している、食べている)
・分類する(怒り、貪欲※、妄想に分ける)
※求めすぎている状態

★「妄想」はナンバーワンの煩悩。抜け出す秘訣は、「妄想」と「感覚」の違いを意識しながら、感覚に意識を集中させる練習をする。

2)良し悪しを判断しない

★判断…全ての物事に対する自分の判断(決めつけ、思い込み、自虐、落胆、不安、人物評など)
人は「執着」によって苦しむ
人が苦しみを感じる時、その心には必ず「執着」がある
「自分が正しい」という執着を持つと"慢"が生まれる(傲慢)

★どんな状況でも判断せず、真実かどうか、自分にとって有益かどうかで考える
 
自己否定しない。(その判断に必要性がない)

3)マイナス感情で損しない

★悩みを整理する
①感情の問題(自分の問題)
②相手との関わり方
※①と②は分けて考える

★相手の言葉に反応したら、自分も同じ反応をしたことになる。「苦しみのない心」を人生の目的にする以上「反応して心を乱されることは無意味である」
どんな時も相手を見据えて理解するのみ

★反応しないことが最高の勝利
「もし罵る者に罵りを、怒る者に怒りを、言い争うものに言い争いを返したならば、その人は相手からの食事を受け取り、同じものを食べたことになる。わたしは貴方が差し出すものを受け取らない。貴方の言葉は、貴方だけのものになる。そのまま持って帰るがよい。」〜罵倒するバラモンへの言葉

★人間関係の基本は相手に委ねる。異なる意見をぶつけられるのは当たり前。相手が分かると思い込まず(妄想せず)に相手の意見を理解しようとする


★反応はせずに自分の心を見ることを忘れずに。心が動くのは当たり前。それ以上の反応(怒り、不安etc)をとめる。
「反応しない、まず理解」


★困った相手との関わり方
①相手のことを判断しない
②過去は忘れる
③相手を新しい人と考える
④理解し合うことを目的とする
⑤関わり方の方向性をみる

マイナス感情が湧いた時は「判断」したがる。判断はいつも自分自身の承認欲、つまり「慢」と繋がっている。
★人間同士の喧嘩は常に"慢"と"慢"のぶつかり合い
どちらにも(正しいと思っている)言い分がある。相手の言い分を否定しない。「あなたにとってはそれが正しいのですね」と理解するだけ。

★記憶を相手にしない(過去は忘れる)
その場を離れても相手にイライラ、モヤモヤしていたら、それは自分自身の「記憶」に反応しているだけ。相手は関係ない。
嫌な記憶が蘇ったら、その記憶への「自分の反応」をみる。「これはタダの記憶」「反応している自分がいる」と冷静に理解して感情を鎮める。

4)他人の目から「自由になる」


★承認欲は"妄想"である

そもそも人はそれぞれ条件が違う

条件が違うなら、結果(成果)が違うのは当たり前

承認欲は誰にでもある。それを正しく利用する。

動機(モチベーション)にするのは良いが、目的にしてはいけない。何故なら?それ(評価)は他人が決めることだから。
★それよりも自分のやるべきコトに集中することを目的にすべき。

★無明(無理解)の状態において、心は反応する。
刺激に触れた時、心は反応して、感情が、欲求が、妄想が結生(作られる)する。その思いに"執着"することで、ひとつの心の状態が生まれる。その常態が新たな反応を作り出し、様々な苦悩が生まれる。

5)「正しく」競争する


求める心…人より優位に立ちたい、上に行きたいと思う心

そんなの気にしてないと思う人(自分)も心の底では競争意識(求める心)が働いている?

★競争は"妄想"である

しかし世の中は競争に溢れている
学校の成績、学歴、年収、キャリアなど、競争社会

他人と比べず、自分に勝つ

★正しい心で社会と向き合う(四つの心)

・相手の幸せを願い(慈しみ)、
・相手の苦しみに共感(悲しみ)、
・相手の喜ぶことに共感(喜び)、
・欲や怒りという反応を捨てること(捨てる)

※世間ではこれら四つをまとめて「愛」と表現している。仏教ではもう少し厳密に四つの心の働きに分け理解する。

★五つの妨げ
・快楽に流される心・怒り・やる気の出ない心・落ち着かない心・疑い
このような心の状態では、物事をよく理解することも、正しく考えることもできない。ゆえに苦しみの連鎖はいつまででも続く。
人間だから妨げに負けることもある。自分を否定せず「弱い心」に気づくことが大切。

★嫉妬、コンプレックス
承認欲を相手に向けている状態。「相手」が原因なのではない。その怒りの原因は、「認めてもらえない」という自分自身の承認欲の不満にある。八つ当たりと同じ。「相手は関係ない」と考えて怒りから降りること。自分の内側(動機、持っていること、できること)
を見ることから始める。

終)考える「基準」を持つ

★"正しい生き方"とは
・反応せずに正しく理解すること(正見:しょうけん)
三毒など悪い反応を浄化する(清浄行)
・人々・生命の幸せを願うこと(四つの心で)

心に"よりどころ"を持つことで、さまよえる人生を抜け出す。
ブッダは「自分自身」と「正しい生き方」のみをよりどころにして、"他のものに決してすがるな"と伝えていた。



[まとめ]
仏教は「生きる事には苦しみが伴う」と説く。これは「生きることはラクではない」という実感である。
"結論"ではなく"出発"なのだ。ブッダは「その苦しみを乗り越えなさい」と前向きな希望を語っている。
「自分だけではない。人はみな、苦しみを抱えている」〜筆者より


[用語集]

四聖諦(ししょうたい)
四つの真理のこと。
「世界は永遠か、終焉があるか。有限か、無限か。霊魂は存在するか、しないか。死後の世界があるか、ないか。私はこれらのことを、確かなものとして説かない。なぜならそれは、心の清浄・安らぎという目的にかなわず、欲望ゆえの苦痛を越える修行として、役に立たないからである。私はこれらの目的にかない、役立つことを確かなものとして説く。それは、生きることには"苦しみ"が伴う。苦しみには"原因"がある。苦しみは"取り除くことができる"。そのための"道"(方法)があるということである。」

渇愛(かつあい)
求める心。いつまでも渇いてる満たされない心。

サティ(瞑想)
言葉で確認する。感覚を意識する。

三毒 : 貪(とん)、瞋(じん)、癡(ち)
人間の三大煩悩。(貪欲、怒り、妄想)

不動心(ふどうしん)
禅語。心は動き続けて当たり前。自分の心を見る、見張って、よく気づいて、それ以上の反応を止める。

解脱(げだつ)
正しい理解を極めた人、ブッダが到達した境地。悟り、涅槃(ねはん)

無常(むじょう)
現実(万物)は常に変わりゆくもの。諸行無常

八正道(はっしょうどう)
目的成就のための8つの教え。正念(よく気づくこと)、正定(一点に集中)、正精進(気づきと集中を継続)、etc…

脚下照顧(きゃっかしょうこ)
足元(自分の内側)を見るーという生き方。「自分にできることは何か」「改善を重ねていく」謙虚な生き方。

三帰依文(さんきえもん)
仏教徒が宣誓する誓いの一節。仏(ブッダ)・法(ダンマ)・僧(サンガ)の三つに基づいて生きるという誓い。「自らの心の土台に"正しい生き方"を据えます」という、自らへの約束・誓いのこと。


https://store.kadokawa.co.jp/shop/g/g321501000178/